学問のすすめ(学の構築について)
最近、柔道整復師業界では「柔道整復学の構築」ということを熱心に推進しておられます。要するに柔道整復学という学問体系をこしらえましょう、ということです。おおよそどんな業界であっても学ぶ姿勢は大切であります。しかしながら、です。柔道整復師の「学」のありかたについて私は大いに懐疑的です。
ぶっちゃけた言い方をすれば東洋医学やカイロプラクティックのような哲学をもたない柔道整復に(何でもかんでも捻挫、というのは哲学とはちと違うようですナ)独自の学問体系が成立するのか、ということです。
基礎関係(解剖や生理)の研究に柔道整復師が携わることを否定はしませんが、これも基礎医学の分野に柔道整復師が参入しているだけの話であって柔道整復師の「学」の在り方とは少し違うように思います。
本来、柔道整復師は技術職でありますからもし柔道整復に「学」が存在するのならそれはまず真っ先に古来から伝えられた伝統の手技の保存、整理であるべきです。
ところがたとえば江戸時代に存在した整骨技法を現在、臨床の場で用いている柔道整復師は皆無、ではないのかもしれませんが少なくとも私はその例を知りません。
「骨折や脱臼の処置ができてこそ柔道整復師」とはよく言われますがそういうことをおっしゃる先生の手技はとみればおそらくはいわゆる西洋医学の流れを汲むもの、もっとはっきり言えばかなり旧式の整復法でありましょう。要するにコッヘル法やミルヒ法で仮に何百何千例の肩関節脱臼を整復したところでそれは西洋医学の欄外にかろうじて記載されるくらいのものにすぎません。
それならば柔道整復学とはどうあるべきなのか。
現在、柔道整復師が行っている業務の記載保存に尽きるでしょう。どういう症例にどういう処置をしたらどんな結果になったのか。これを地道に記録していくことが今のところ柔道整復師にできる唯一の「学」でありましょう。
一人ひとりの治療法が大きく異なるうえに対照群を持たない柔道整復の臨床でそのようなデータ収集は役に立たないように思っていました。ところが医療系の大学で教鞭をとっている知人の話ではそうでもないようなのです。
たとえば急性の腰痛症に対して手技療法を行った結果有効であったもの、といった具合にデータの集約が可能なのだそうです。もちろんそのためには記載は正確でなければならず、何でもかんでも急性外傷ではどれだけデータを集めても何の役にも立ちはしません。
とりあえず学の構築を言うのならばまずそこから始めるしかありません。柔道整復師の施術が世の中にとってどれだけ有用であるかということをアピールするために「学」を言うのならまずは正確なデータを集めるべきです。その前に世間に有用な施術を行うことが大前提になるのはもちろんですけれどもね。
健康保険が使えて安上がりのマッサージ、というのも有用には違いないのでしょうが。
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