治療院のセンセイ2(促成栽培?)
いわゆるカイロプラクティックとか整体の先生の多くが国家資格を持たない、という話を前回いたしました。「それがどうした」とおっしゃる方もおられるかもしれません。「私の通っている整体院の先生は国家資格はないけれど丁寧に治療してくれる立派な先生だよ。」という話ですよね。
では、何が問題なのか?
まず、教育体制が貧弱です。手技療法そのものをきちんと教えてくれるスクールは存在します。私もそういうスクールやセミナーで現在使っている手技を学びました。ただし、です。基礎医学のカリキュラムがお話にならないくらい貧弱であることは否めません。
たとえば柔道整復師やはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師などの学校(三年制)では解剖学や生理学、病理学などの基礎医学を一年間学びます。そのほかにも整形外科や内科についても相当の期間学びます。そしてその上で、各種の治療法を学んでいくわけです。
カイロや整体のスクールではこの部分が決定的に弱いです。それはある意味当然なわけで、週に一回数カ月から一年程度の通学期間で基礎医学に時間をかけることは実際無理な話です。 受講する側としても「短期間で治療院のセンセイになれる」から民間のスクールへ通っているわけで基礎医学を一年かけて学ぼうという意識は希薄でしょう。
その結果、どうなるか。
とんでもなく貧弱な知識と高度な技術(?)を持ったセラピストが大量に世の中へ出て行きます。技術が高度であればあるほど危険なのはわかりますでしょうか。例えばの話、運転免許のない人にスポーツカーや大型トラックを運転させるようなものです。無免許運転で事故を起こした人は「このくらいなら俺にもできる」と思って自動車を運転するわけですよ。
さらに怖いのはそれだけの貧弱な知識しかないセラピストが「自分は基礎医学を学んだ」と思い込んでいる点です。 国家資格のセラピストにしても基礎医学を十分に学んでいるか、と言えば全然不十分でしょう。例えばの話、医療系の大学(医学部や歯学部、薬学部など)でどんなふうに基礎医学を教えているのか私には見当もつきません。ただ、少なくとも一年かけて基礎医学を学んで(試験も数回あります。常に底辺の成績であった私が言うのもなんですが)人の体について、自分はまだまだわかっていない、自分の知識、技能が及ばないことも多いということは身にしみて分かっているつもりです。
無資格の方と話していて引っかかるのはこの点です。ご自分の技術の高さを吹聴される方は多いのですが(実際、高度な技術をお持ちなのですが)人の体を触る怖さを自覚しておられる方にはまだ、ほとんどお目にかかったことがありません。
PR