諸悪の根源(徒弟制度の残滓)
さて、何回か述べてきましたように整骨院のなかには養成学校の学生に施術をさせて(この時点ですでに不正です)さらにそれで保険請求を行う、という手口が蔓延しています。復習しておきますと、無資格の助手が行うことのできる行為は「包帯を巻くことや湿布薬の交換、副木を当てるなどの補助的な業務」ということになっているようです。
無資格の助手に患者さんを触らせる、という発想自体が普通では考えにくいですよね。少なくとも医療を標榜するのなら絶対に容認できないはずのことを皆やすやすとやっている。なぜか?
これはかつての徒弟制度の名残、ということであろうと考えます。私が養成学校に入ったころは学校へ入る前にまず、どこかの柔道整復師に弟子入りする必要がありました。でないと、養成学校の入学試験になかなか合格できなかったのです。弟子入りすることで養成学校の関係者にコネを作らないと合格は難しかった。どのくらい難しかったかというと、大学受験予備校で現役の講師をしていた私が自分の教えている科目で受験して不合格になってしまうくらい。
実際入学のからくりを知らずに試験を受けたもので、不合格の通知が来た時にはびっくりしましたね。試験は簡単だったし、それまでに柔道整復学校の志望者対象の模擬試験、というのを受けたことがあるのですが全国ダントツの一位でした。受験についてはプロですから学校のレベルについても当然見当はついてました。
なんで不合格になったのかわからないまま別の学校を受験して、こちらは当然のごとく合格。入学してみるとクラスメートは皆、整骨院のお弟子さんばかりです。そうでないのは整骨院の息子か娘。整骨院勤務、といってもコネで入学させてもらったお礼奉公なもので待遇はひどかったようです。給与が月に一万円なんてのもいた。彼らが何をさせられていたかというと無資格施術ですよ。ついこの間学校へ入ったばかりの学生が一人前の顔をして人の体を触っている。
もっとも、このころには既に整骨院に骨折や脱臼の患者さんが来ることは少なくなっていましたから彼らがやらされるのは無資格のマッサージまがいです。老人保健は月一回八百円支払えばいい時代でしたのでそれこそわんさと高齢者の患者さんが来ていたそうです。整骨院がレジャーランド化していく過程です。
無資格の、安い労働力を使って慰安娯楽に近い施術を提供して、それで保険請求して儲ける、というパターンがこうして形作られてきました。そしてそのころ安い賃金でコキツカワレテいた層が現在、偉ぁい先生になって地域医療に貢献しておられるわけです。
現在では柔道整復師の養成学校に入学するのにコネは必要ありません。養成学校の数が爆発的に増加したからです。以前のような前近代的な徒弟制度は消滅しました。でも、どうやれば儲かるか、というパターンは残滓のように残っています。
業界が本気で柔道整復師の保険取り扱いを守るつもりなら簡単です。養成学校の学生を施術所の従業員にすることを禁じればいい。それに対してあれこれ異論をはさむのは、無資格の助手を使って儲けている証拠だと思います。
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