[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今度は京都で柔道整復師が逮捕されました。交通事故の保険金詐欺にかかわった容疑です。ちょっと予言?しておくならこの先同じような事件が雪崩をうったように報道されるでしょう。なぜなら世間が柔道整復師を、「そのようなもの」と認識し始めたからです。たとえは変ですが、髪の毛が伸びてきて散髪に行きたいな、と思った瞬間にやたら理髪店の看板が目に付くようになるのと同じ理屈で「よからぬことをする柔道整復師(整骨院)」に関する報道は急激に増え続けることでしょう。
柔道整復師の健康保険取り扱いも早晩消滅するでしょう。それが来年なのか三年先なのかは別にして。
柔道整復師の業務のうち、骨折、脱臼、打撲、ねん挫、挫傷の幹部への施術に健康保険が適用されるに至った経緯は、整形外科の医師が少なかった時代にその補完機能を期待されてのことでした。要は医師の代わりに柔道整復師がこれらのけがの治療にあたっていたわけで、それゆえの健康保険の取り扱いであったのです。
現在、街の至る所に整形外科のクリニックがあります。骨折や脱臼の治療に人手が足りない、ということはなさそうです。では、整骨院では何が行われているか。以前このブログで「柔道整復師は手技療法の専門家としての道を模索するべきだ。」という意のことを書きました。自分もそうありたいと精進しているつもりですし、開業の相談を受けてもそのようにお答えしています。ところが、現実はどうか。
以前、鍼灸の専門誌が柔道整復師の特集を組んだことがあります。そのとき、開業柔道整復師へのインタビューで「なぜ柔道整復師になりたいと思ったか?」という問いに対し、「電気を当ててチョコチョコ揉むだけでそこそこ儲かると思ったから。」と答えているのを読んでぶったまげた記憶があります。でも、現実はそんなもんでしょう。患者さんも慰安娯楽のためのリラクゼーションくらいにしか思っていない方が多いのではないでしょうか。
チェーン展開しているような大きな整骨院では「やまびこ掛け声」というのが推奨されているそうです。居酒屋チェーンなんかへ行くと表の方で店員さんが「いらっしゃいませ!」とお客に声をかける。それに呼応して店の奥でも「いらっしゃいませ!」と声をかけるあれです。大手のコンサル会社が言い出したようで、その会社のコンサルタントの治療院経営の本にもちゃんとこの「やまびこ掛け声」が載っています。莫迦にされているのが分からないほど、きょう日の柔道整復師はお利口さんなのでしょうか。
「新しい先生が入りました」という張り紙を貼っている整骨院を見たこともあります。「新人入店」って、それはフーゾクの広告やないの。
どんどん柔道整復という仕事が軽くなってゆき、人の体を預かる責任と誇りはどこかへ行ってしまう。この流れはでも、もう止まることはないでしょう。
おそらくほとんどの柔道整復師はこの命題を考えながら日々の業務をこなし、酒を飲み、死んでゆくのだと思います。(そんなことないか)
よく聞かれるのが「柔道整復は東洋医学ですか?」という問いです。東洋医学と言うのは陰陽五行説に基づいた医学で鍼灸と湯液(漢方薬)が代表的なところです。残念ながらどちらも柔道整復師には扱えません。「目のツボを教えて。」とお尋ねをいただくこともあるのですが恥ずかしながらこれも知りません。「知らない」と言うと怪訝な顔をされるのですが柔道整復のカリキュラムの中にツボ(経穴)は出てきません。
最近よく言われるのが「民族医学」です。日本古来の柔術に由来する伝統医学、と言う位置づけです。確かにそういう一面もあるのかも知れませんが少なくとも養成学校で学ぶ手技には柔術由来のものはまれです。
骨折や脱臼についての知識もふつうの整形外科の教科書と同じような内容を学びます。
それなら柔道整復は西洋医学なのでしょうか。これは当の西洋医学(医師)から即座に「違う」と言われるでしょう。医師のもとで仕事をするのは楽しいですが(現在も定期的に医院でクラニオセイクラルを行っています)それはいわゆる西洋医学を補完する立場を認めていただいているからであり、医師を頂点とするヒエラルキーの中へ組み込まれたいという感覚とは違います。
一年ほど前のこと、大先輩にあたる先生の実技を拝見する機会がありました。私が生まれる前から柔道整復師であったその先生はこんなことを講義の途中でおっしゃいました。
「私らは、ヒポクラテスから続くナチュラル・セラピーの継承者なんや。」
奈良でまたまた整骨院の不正が発覚しました。奈良県の私大で野球部の総監督をつとめる男が自分の経営する整骨院で保険の不正請求を行っていたものです。不正請求(というか詐欺)の手口が自分が指導している野球部員を使っていたというのですから悪質です。一部の不届き者が起こした事件、では済まされないほどにこの手の不正が後を絶ちません。
ただ、このニュースを見ていてふと思いました。この総監督、年齢は五十歳とありますから私と同世代です。整骨院の開業が2006年ですから開業してから二年とちょっとしかたっていません。マスコミの取材に対して「整骨院の経営が思わしくないので不正請求に手を染めた」旨、述べているそうですが私にはそうは思えません。
たぶんこの男、柔道整復師の免許は持っていないのでしょう。柔道整復師の免許を持たずに整骨院が開業できるのか、と言えばできます。整骨院の開設は柔道整復師以外でも可能です。(病院や診療所も医師以外が開設できますが、この場合は都道府県知事の許可が必要です。整骨院の場合開設者がだれであっても届け出だけで構いません。)
ですから、資金力のある企業で整骨院業界に参入してくるところは多いです。また、小金のある人(中小企業のオーナーなど)が整骨院を開業することも多いです。芸能人の副業のひとつにもなっているといいます。
そんな整骨院が儲け以外のことを考える方が不思議なくらいで、当然そこには好ましからざる事実があるのでしょう。
たとえば柔道整復の学生を大量にアルバイトとして採用しているところ。学生は柔道整復師ではありませんから施術はできません。助手としてできる仕事はせいぜいがシップの交換とか包帯まきの手伝いくらいでしょう。そのくらいにしか使い道のないものを大量に雇い入れて一体どんだけ湿布を貼るのでしょうか。
さらに驚くべきことに「免許の貸し借り」というのまであるそうです。これは時々卒業前の学生から相談を受けます。「柔道整復師の資格を取ってから、鍼灸の学校へ行く予定をしてるんやけどその間免許貸して、って言われてるんやけどソレっていいの?」もちろんダメです。明らかにこれは犯罪で、「こんなことを申し出てくる人間にマトモなやつはおらんから相手にしたらあかん。」と言うのですがそういう整骨院もあるのでしょう。
そして今回の事件です。大学側のコメントを新聞で読む限り「大物」OBである総監督の不正行為に野球部ぐるみ加担していた感はぬぐえません。(下手すると大学ぐるみ、かもしれませんね。)そしてその裏には資格を金で貸し借りする柔道整復師やその他もろもろの業界にたかる人々がいるのでしょう。柔道整復師を「資格」ではなく健康保険を取り扱うことのできる「利権」と考える人間の多さに最近私は憂鬱です。