マサカリを研いで針を得る
自然良能会の五味会長先生がよく言っておられた言葉だそうです。
むかし、自然良能会におられた先生に骨盤調整という手技を教わっていました。会には機関誌もあって毎月会長先生のお話が載っていました。そこにもこの言葉はよく載っていました。
その心は「治療はひたすらやってやってやりぬくことが上達のための条件である」ということでありましょう。
金太郎さんの持っているマサカリを研いで研いで針になるくらいまで研ぎ澄ますそういう努力が治療師には必要であるということを説かれていたのだと理解しています。また、治療は「行」であるとも言っておられました。
これも反復練習の重要性を説かれていたのでしょう。
事実講習はひたすら基本手技の繰り返しです。足から始まって頸椎に至るまでの全身の緩和操作と調整法とを二人ひと組で行います。師匠が受講生の周りをまわって悪いところを直し、質問にも答えてくださいます。
特徴的だったのが(良能会本部で講習を受けたことがないのでこれが良能会のシステムであったかどうかは知りませんが)筆記を一切許されなかったことです。テキストもなし。
最初はおろおろしますがだんだん覚えるものです。覚えてしまうと生意気なもので「もっと高度な技術を教えて下さい」となる。もちろん一切応じてはもらえません。全くの初心者もベテランも同じことの繰り返し。
それで勝手に自分で免許皆伝をして研究会に来なくなる人もたくさんいました。かくいう私もその口で三年くらいで行くのをやめてしまいました。
そのあとも数年間、骨盤調整はメインの手技として使っていましたがクラニオセイクラルに出会ってそのままクラニオに転向してしまいました。
その後十余年、依頼があってクラニオを教えるようになって良能会で教わった「マサカリを研いで針を得る」の意味がよくわかるようになってきました。
「もっと高度な技術」なんてのは存在しません。ひたすら習った通りに繰り返すことで初めて技術を自分のものにできるということに気がつかなければいくらセミナーに通ってもなにも得られるものではありません。
そんなわけで治療技術を一般に公開するのは今年度で中止します。私は研ぎかけで錆の出たマサカリをもう一度心をこめて研ぎ始めます。
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