ドイツ光線
ほとんど医療機器のない当院なのですが光線治療器、というのが置いてあります。これは二本の炭素棒に電極を流してスパークさせ、その際に発生する光を患部に照射するというものです。可視光線療法とかカーボン灯とかいろんな呼ばれ方をします。
結構いろいろな疾患に効果があり、私も個人的に愛用しております。オステオパシーのスクールに行ってた時も「光線療法学」という科目がありました。手技療法と併用しても効果的ですが、この機械(メーカーもいくつかある)だけで治療を行うところもあります。
以前のこと、来院されたクライアントが光線治療器を見て「ドイツ光線」がありますね、と言われました。
「ドイツ光線?」たしかカーボンの発する光を(カーボンアーク灯と言います)医療に応用したのはフィンランドのフェンゼンという人であったはずです。
医療用のカーボンにはドイツ製のものもあったはずなので全くドイツと無関係ではないのですが。
考えるに戦前の医学がドイツ由来のものであったことが関係しているのかもしれません。光線療法は戦前からあったもので専門の治療院もあったようです。
坂口安吾の「古都」という小説に主人公の下宿先の飲み屋さんに出入りするアヤシゲな人々(作者は「百鬼夜行」と彼らを呼んでいます)が描写されているのですがその中に「可視線灯という治療をやっている男」というのがでてきます。
当時の民間療法に対する一般的な見方がうかがえて興味深いのですがそうであれば光線療法に医学の本場?ドイツの名称を冠して営業をしていた人がいても不思議ではないでしょう。
それがそのまま現代に残ったのでしょうか。
そういえば文房具でもドイツ製と言えばなんか精密で高級な感じがします。私の趣味の昆虫標本を入れる箱(黒塗りで蓋がぴっちり閉まり、害虫や湿気の侵入を防ぐ)にもドイツ箱という名前が付いています。
医学の本場は戦後アメリカということになったらしいですしドイツにだってずぼらでちゃらんぽらんなオヤジもいるのでしょうけど日本人にとってドイツという国名の持つイメージは根強いのでしょう。
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