幸せってなんだっけ?(柔道整復学の方向性はまちがっている)
柔道整復師を目指す学生たちを教えていて思うのですが、彼らは本当にいろんなことを知っています。
私たちが学生のころと比べると教わる内容の質、量ともに比較になりません。彼らに羨望を禁じえないのですが、ひょっとすると現在のような膨大なカリキュラムでは私はついていけないかもしれません。
ところで彼らが授業で使用する「柔道整復学」の教科書が改訂されたのですが(現在の一年生から使用しています)内容を見ているとどうしても疑問に感じることが多いです。
まず、ウエートの大半を骨折と脱臼が占めていること。これは「骨折や脱臼を整復できてこそ柔道整復師」という一見もっともなスローガンによるものでしょう。業界団体も学会も教育する側もたぶんそう考えて教科書を改訂し、カリキュラムを作ったのだと思います。
でも、実際問題として骨折や脱臼に対する施術をこれからの柔道整復師が行っていく可能性は限りなくゼロに近いと思います。
その理由は以前も書いたとおり、現在の医療システムでは柔道整復師が骨折脱臼を診るためにはハードルが多すぎます。
これだけ医療が発達した現在において(わざわざ医療機関を受診してからでないと柔道整復師は骨折、脱臼の患者さんを診ることはできません)麻酔や画像診断の恩恵なしに骨折や脱臼の施術を行うことにどれほどの意味があるのでしょうか。
意味、というのはもちろん患者さん側のメリットを指します。
学問として外傷を学びたい、というのなら話は別なのですが柔道整復師は臨床の現場で実務を行うための資格です。実際には使用することのない知識をいくら詰め込んでもそれは患者さんの役に立つのか、という話ですよ。
学の構築、というのが柔道整復師業界、学会挙げての目標なのですが知識をたくさん持っていることが「学問」であるかというとそれは違います。本を見れば載っていることをいくら詰め込んでもそれはマニアの世界です。
その知識で人を幸せにできるのがプロというものではありませんか。
ついでに言っておけばその知識のレベルについても私は大いに疑問を持っています。たとえば上腕骨近位端部の骨折の記載が一般的なNeerの分類を全く無視していたり、上腕骨顆上骨折でのレントゲン所見のファットパッドサインの記載が誤りだったり、医師と共通の認識を持つのにもあんまり役に立ちそうにありません。
レベルの高い知識を得たつもりで頭でっかちになってしまった柔道整復師も、ハナから金もうけの手段として割り切っている柔道整復師も、何のための資格であり知識なのかをもう一度考え直してみるべきでありましょう。
PR