さらばエンタプライズ出版
代替医療専門の出版社エンタプライズが今日で廃業します。
20数年前のこと、柔道整復師の専門学校に通っていた私はちょこちょこと大阪の旭屋書店の「東洋医学」コーナーをのぞくのを楽しみにしていました。
現在のように手技療法が一つの書棚を与えられているわけではなく、鍼灸関係の書籍の片隅にわずかに手技療法の書籍が並んでいる、という程度の出版点数でありました。
ある日、書棚に「腰痛全科」という書籍があるのを見つけました。日本指圧師会長の高木幹市先生が著者で、さまざまな腰痛の診断法がわかりやすく書かれていました。2500円、という値段は当時の私にとっては決して安くはありませんでしたが内容は刺激的でした。聞きなれない「エンタプライズ出版」の名前を目にしたのはそれが始めでした。
読み進むにつれてもっとこの著者の書いたものを読みたくなりました。ところが同じエンタプライズ出版から出ている「指圧・整体教本」は15000円もするのです。もともと文学部にいましたから普通に本は買っていて、単行本が数千円するのは承知していましたが「医学関係の本はたっかいなあ。」と感心したことでした。
治療法を模索していたころには(いまでもしてますけど)セミナーと書籍にずいぶんとつっこんだものです。開業すぐのお金のない時でも全く文句を言わなかったTOMOには感謝しています。いつの間にか一冊数万円、という本でもあんまり躊躇しないで買うようになりました。
出版社にもそれぞれ傾向があって、日本の手技療法家でも理解しやすいようなタイトルを主に出版しているたにぐち書店に対してエンタプライズは欧米の、つまり手技療法の大学教育がおこなわれている国々の翻訳本を多く出版していました。
大枚をはたいた書籍でもちゃんと読みこんでいないものもたくさんあります。本棚の飾り、と言うにはあまりに高価ですがこれからの臨床家人生のどこかできっと役立つに違いありません。ひょっとしたら次代の柔道整復師たちが私の集めた書籍から何かを得るのかもしれません。
まだ生まれていないかもしれない未来の臨床家たちのぶんまで、ありがとうございました。
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