パクられた治療師、および自称治療師(あのオジサン覚えてますか)
法律的には診断権がない、と言ういささか情けない理由ではありますが柔道整復師が内科疾患に対して施術を行っても無資格医業にはならない、と言う話を前回書きました。このあたりについてもう少しケーススタディを交えて説明いたしましょう。
去年、千葉で「子宮筋腫を手で揉んで治す」と称していた整体師が逮捕されました。かなり強烈なインパクトのあるオジサンでしたので(逮捕の瞬間がテレビで流れていました)ご記憶の方も多いでしょう。
整体師、という国家資格はありませんからこの男は法的には全くの素人です。医師の免許がないにもかかわらず患者さんに症状を聞いたり腹部を揉んだり、といった医療行為を行ったわけですから医師法違反(無資格医業)になります。
新聞報道では、揉まれたところが青あざになったり痛みが出たりした人もいた由が載っておりましたが、もしこの整体師が本当に子宮筋腫を治すことができても、やっぱり医師法には違反しています。無資格の整体師が施術を許されているのはあくまでも人の健康に有害の虞のない場合に限られているからです。
さて、人の弱みに付け込んで治せもしない疾病を治すと称して高額の治療費を請求する輩はいつの世にも絶えません。数年前のこと、東京で「赤外線を照射するとがんが治る」と称してがんの患者さんに施術を行っていた男が逮捕されました。この男は「病院の薬は服用するな」とか「調子が悪くなったのは好転反応だから心配ない」「あと3回治療すれば治る」などと言い、治療院に通わせていたそうです。
その治療に使っていた赤外線治療器は肩の凝りをほぐす効果こそあれ、がんに効くなどとは真っ赤なウソでした。被害にあった方の中にはなくなった方もおられるようで、こんな輩が逮捕されるのは当然のことでしょう。
では、この男が逮捕された時の容疑は?
医師法違反? いいえ、違います。詐欺罪。
人命が失われたりこちらの方がたちが悪いのになぜ?と思います?なぜかと言えばこの男、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っていたのです。(あん摩マッサージ指圧師が電気、光線を使用することは認められています。)
昨日書きました風邪の患者さんに誤った治療法を指示して死なせてしまった柔道整復師と同じで施術したこと自体には違法性は認めにくいのです。だから、当局も医師法違反での立件をしなかったのでしょう。
今回は柔道整復師は出てきませんでしたが国家資格のある治療師については法律上、施術を禁じられている疾患はないと考えていいと思います。もちろん判断を誤って不幸な結果となれば責任を問われますし、治せもしないものを「治せる」と言って施術を続ければ詐欺にも問われますが。
それなら柔道整復師やはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師などが医師法違反に問われることはないのか、と言えばあります。たとえば投薬とかその指示あるいは外科手術を行った場合、医師法違反で罰せられることとなっています。
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