国会答弁書
まずはこれをお読みください。
衆議院議員内山晃君提出柔道整復師の業務に関わる健康保険請求の取り扱いに関する質問に対する答弁書
平成17年2月10日
柔道整復師は、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の規定に基づき柔道整復を業とする者であるが、その業務範囲については、昭和四十五年の柔道整復師法に係る提案理由説明において、「その施術の対象も専ら骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など新鮮なる負傷に限られている」とされていることを踏まえ、一般的に、骨折、脱臼、打撲、捻挫及び挫傷(以下「骨折等」という。)の施術と解しており、御指摘の腱鞘炎等の施術がその業務範囲に含まれるか否かについては、慎重に判断すべきものであると考えている。(後略)
柔道整復師の業務範囲が脱臼・骨折・打撲・捻挫であると主張する人々がその法的根拠に挙げているのがこの答弁です。でもそれ本当?
下線部「昭和四十五年の柔道整復師法に係る提案理由説明」とあります。従来、柔道整復師ははり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師と同じ法律に規定されていたのですが単独で柔道整復師法を制定してほしい、と請願を続けます。単独で法律を定めるにはそれ相当の理由が必要なわけで、そのうちの一つが「施術の対象が骨折・脱臼・打撲・捻挫である」ということだったのです。
念願かなって単独法は制定されたのですが「業務範囲」については単独法制定以前(はり師・きゅう師・按摩マッサ-ジ指圧師および柔道整復師法の時代)と変わっていません。
これは当時の厚生省が出した「柔道整復師法の施行について(昭和45年7月23日医発第858号)」に「柔道整復師の業務は本法第二条第一項及び第四章に定めるとおりであり、本法の制定によって従来の業務範囲と異なるところはないものであること。」とあることから明らかです。
つまり柔道整復師の業務範囲は「骨折・脱臼・打撲・捻挫に対する施術である」というのは柔道整復師が勝手に言ってるだけ、だったことになります。
これは私の推測ですが柔道整復師は業務を独占していますから、単独法制定によって骨折等に対する施術を独占できると踏んだのではないか。ところが依然としてあん摩マッサージ指圧師や鍼灸師にも骨折・脱臼の患部に対する施術は許されている。なんのこっちゃ、ということだったのではないでしょうか。
だから冒頭の国会答弁はこういうことになります。「柔道整復師法制定の時に、柔道整復師が自分たちは骨折等の新鮮外傷しか施術しないと言ってるんだから業務範囲は骨折等に対する施術でええんちゃう?」
下線部に「一般的に」とあるのは法律とか規制とかではなく「柔道整復師って何する人?」という普通の人の問に対する答えと同じということです。
なんでそんな答弁になったかと言えば以前にも書きました昭和41年9月26日の医事108号、「医行為又は医業類似行為(広義とする。)であるか否かはその目的又は対象の如何によるものではなく、その方法又は作用の如何によるものと解すべきである。」と柔道整復師単独法成立の際の提案理由のちょうど真ん中をとったからでしょう。
繰り返しになりますが冒頭に引用した答弁は一般論を述べただけで個々の傷病に対する施術が柔道整復師の業務に含まれるかどうかの判断をしていません。腱鞘炎等への施術が業務に入らないと言えば医事108号にバッティングするし、入ると言えばいわゆる慢性疾患に対して保険請求をする柔道整復師が出てくるのは目に見えていたからです。
保険外で施術するのも柔道整復なんやけどな、と私は思うのですがいかがでしょうか。PR