業務範囲とは何ぞや?
柔道整復師の業務範囲についての考察その1です。
まず、一般に「業務範囲」という言葉が「施術の対象となる傷病」の意味でつかわれることはありません。では、どんな意味でつかわれているのか。
[第5条但し書きの「応急の手当」とは、骨折または脱臼の場合に、医師の診療を受けるまで放置するときは生命又は身体に重大な危害を来す虞のある場合に柔道整復師
がその業務の範囲内において患部を一応整復する行為をいうのである。
したがって応急の手当ての場合であっても、全くその業務の中に含まれない止血剤の注射、強心剤の注射等は勿論許されない。]
[レントゲンを使用して診察または治療をなすがごときは、
柔道整復業の業務の範囲を超えるものと解する。]
引用したのはどちらも昭和20年代の厚生省(当時)からの通達です。一般の方には何のことやらわかりにくいでしょうが下線部をご覧になれば薬品を注射したりレントゲンを使用したりすることが柔道整復師の業務範囲を逸脱している、と言っていることは一目瞭然です。だから柔道整復師の業務範囲は、というのはけっきょくのところ「柔道整復師が行ってもよい行為」を指しているだけでそれ以上の意味はありません。
「施術の対象となる傷病」については柔道整復師法に規定はありません。ただ、第17条に「柔道整復師は医師の同意を得た場合のほか脱臼または骨折の患部に施術をしてはならない。」という文言があるだけで、しかも同様の文言は「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師等に関する法律」にも明記されています。だから「柔道整復師は骨折、脱臼の専門家」という言い回しは法律的にはあまり意味のないことになります。柔道整復師が骨折や脱臼以外の症病に対して施術を行いうる、という意味でもはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師が骨折や脱臼の患部に施術を行いうるという意味でも。
いずれにせよ「柔道整復師の業務範囲は骨折、脱臼、打撲、捻挫と法律で定められている。」ということを言っている人は柔道整復師法にすら目を通さずにそんなことを言っていることは間違いないと思います。
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