Judo Seihuku Therapy Theory Book
何の本かと言えば、柔道整復関連の専門学校で使用されている「柔道整復理論」の英訳版です。
どうもWHOで「ジュードーセラピー」として登録されたときに(あるいは登録されるために)わざわざ制作されたもののようです。
日本語版の原著と違うところは製本がべらぼうに豪華なこと。何せ真っ赤なクロス装丁です。
もう一つの違いは、英訳されているのが(つまり外国に向けてアピールしているのが)原著の「総論」の部分のみであるということです。
総論にどんなことが書いてあるかと言うと骨折とか脱臼の定義であるとか治療法のアウトラインであるとかと柔道整復術の沿革について書かれています。
沿革の部分のほかは整形外科のダイジェストというか要約というか、特に柔道整復独自のものはありません。
そして英訳されなかった「各論」、こちらは全く整形外科の引用だけに終始しています。なんせ「柔道整復理論」の初版は「神中整形外科学」という本のまさにダイジェスト版です。版を重ねるにつれて新しい知見を加えてはいるのですがすべて整形外科学由来。柔道整復独自のものなどありはしません。
もし、現在使用されてる「柔道整復理論」をそのまま全部英訳したならば(沿革の部分を除いて)整形外科のテキストそのものになってしまいます。
それでは「代替医療」「民族医療」としてWHOに登録されることはかなわないでしょう。
そもそもWHOに登録というのが政治的なことであるのだから沿革の部分だけでも(しつこいですか)「独自性」らしいことが書いてあればそれでオッケーなのかもしれませんが。
けがの治療から発展した柔道整復、というスタンスはそれで構わないでしょう。ただし、医療の充実した現在けがの治療を行う人員は医師だけで十二分に足ります。
柔道整復師が独自の代替(私は補完、のほうがいいと思うのですが)医療として認められるためには医療でカバーできない部分での有効性をアピールしなければしんどいと思うのですが。
WHOに登録されたジュードーセラピーなんてことで鼻の下を長くしていても、結局のところ柔道整復は世界的には全く認識されていません。当の柔道整復が適当に帳尻を合わせておけばいいや、くらいの認識なのだから仕方のないことなんでしょうけれど。
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