THE DAY AFTERその5(もうちょっと続きます)
足の捻挫、といえば医学的にいえば靭帯の損傷とほぼ同じ意味です。前距腓靱帯が部分的に損傷しているか断裂しているか、そういうことが問題になります。靭帯が断裂していれば場合によっては観血的な処置が必要となるかもしれません。ひょっとすれば骨折を合併していることだってあるやもしれません。そのあたりの鑑別を画像診断でつけることは当然必要となってくるでしょう。
たとえば柔道整復業界でも超音波によって画像診断を行う機械というのが出てきています。診断という言葉を柔道整復師は使えませんので観察装置と言っています。現在では非常にいい画像が描出できるそうです
。それでは柔道整復師はなぜ超音波画像を使うのか、と言えばまず、損傷の程度を判断するのに画像が有用であるからです。そうしてもう一つの理由はレントゲンその他の画像診断装置を法律的に使用できないからです。撮れるものならレントゲン写真のほうがいい。でも撮れないから代わりに超音波を使っているわけです。これを柔道整復師のアイデンテティ、独自性というわけにはいきませんよねえ。
誤解のないように言っておけば私は柔道整復師が超音波画像を施術に取り入れることを低く見ているのではありません。ただ、どこまで鮮明な画像が得られようがあくまでも代用品は代用品で、これをレントゲン写真やMRIに近づけようとエネルギーを使うのはもったいないと思っています。なんせ接骨院を出てすぐのところに整形外科の医院があり、そこで本物のレントゲンを簡単に撮ってもらえるのですから。
代替医療としての柔道整復というのはもはや整形外科医のいない地域でしか成立しないものなのかもしれません。
さて、足の捻挫の話でした。足の捻挫を靭帯の損傷という整形外科と同じ視点でとらえている限り柔道整復師は医師にかないません。それではほかの見方をしてみるとどうでしょうか。「昔、足を捻挫してから何かの拍子に同じ所が痛む。」という方は結構おられます。これは皆さん、どんなふうに考えますか?
放置されていた捻挫だけではなく、それこそレントゲン撮影をして、場合によってギプスで固定して免荷歩行させて、それでも痛みの残っている人は結構います。こういう症状をたとえばある手技療法の流派ではこんな風にとらえています。
突然ですが腓骨頭触ってみていただけますか?軽く腓骨頭を触りながら足をねんざするときのように内がえししてみてください。腓骨頭、動いてるのお判りになります?だから足に強い内返しの外力が加わると腓骨頭が外にはみ出るんですよ。ずれる、という言い方が正しいのかどうか分かりませんが正常の位置からわずかだけれど逸脱している。すみません、もう一度足を内返しにしていただけます?今度は足の甲を意識してくださいね。なんか突っ張ってるでしょう?ここのところはリスフラン関節ですよね。足に内返しの衝撃が加わるとリスフラン関節にもずれが生じます。もちろん足関節そのものにもずれは生じます。こういうところを調整すると捻挫の痛みがしつこく残っていたのがうまく消えたりします。で、これって補完医療じゃありません?
同じ足の捻挫に対し、整形外科では靭帯の損傷という視点からアプローチする。画像をみて診断し、必要に応じてギプス固定したり手術したりして損傷の治癒を図る。繰り返しになりますがこの部分で柔道整復師が医師の代わりにできることは限られています。ところが医学的には治っているはずの足に痛みが残っているときに柔道整復師が(たとえば関節のズレ、といったモデルで)アプローチしていく。それで痛みが解消されれば当然生活の質は向上しますよね。現行の医療にプラスアルファで生活の質を高める、という補完医療の定義にぴったり合っています。
腰の痛みについても同じです。腰が痛い、ということで病院でいろんな検査をしたけれど異常なしと言われた、でもやっぱり腰が痛いという人はたくさんおられます。そういう患者さんに対するアプローチの方法は皆さんいろいろ持っておられるでしょうしこれから勉強もしてゆかれることとおもいます。骨盤、仙腸関節のゆがみが原因だという人もあれば頸椎一番のサブラクセーションだという人もいるでしょう。私のところなら当然頭を触ります。それぞれの考え方、治療法のどれが正しいとかどれがいいかとかの問題ではなく一般の医学と違う見方、違うアプローチの仕方によって「原因不明の腰痛」のかなりの部分が解消できるはずです。
柔道整復師の強み、というか患者さんが求めているものは多分ここなんだと思います。医師の目の届かない、あるいは目を向けようとしない症状。これこそ私たち柔道整復師が拘ってゆくべき対象だと考えます。柔道整復師にとって「補完医療としての痛みの治療」というのがこれから進んでゆく上で結構大きな選択肢になるんじゃないかと思っています。
次回、感動?の最終回です。
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