THE DAY AFTERその4
前回の続きです。
さて、それでは外傷の手当てのほかにどういうことで柔道整復師は世の中の役に立っていくことができるのでしょうか。自己紹介のところで言いましたように、私はクラニオセイクラルという手技を臨床の柱においています。クラニオ―頭蓋骨やセイクラル―仙骨を梃子にして脊髄硬膜の緊張を取っていく、というテクニックで自律神経の調整をすることで様々な症状、もちろん外傷あるいは整形外科疾患以外にも効果があります。たとえば耳鳴りとか頭痛、変わったところでは子どもさんの学習障害なんかにも効果的なこともあります。
月に一回、広島の診療所にも行っているんですけれどこちらの方はサルコイドーシスとか脳手術の後遺症とか医師の指示のもとにいろいろ施術させてもらっています。
クラニオはオステオパシ-由来の手技ですからそっち方面のセラピスト、カイロプラクティックとか整体とかそういう関係の知り合いも多いです。無資格で手技療法を行うことについては皆さんにもいろんな考えがあるでしょうけれども彼らは勿論保険も使えませんし、治療費は全額実費です。それでもそういったカイロプラクティックや整体の治療院、流行っているところはずいぶんとはやっています。必ずしも悪口で言ってるのではないのですが彼らの受けている教育、特に基礎医学は質・量ともにかなり貧弱です。整体関係のスクールの教育機関というのはせいぜいが週に一回、8ヶ月とか半年とかで卒業というところが多いです。解剖生理なんて初めの一ヶ月間、週に一日の授業だけですから二時間足らずの講義を4コマくらいしか受けていません。そのくらいの知識しかない人に自分の体を預けるのは怖くてできないだろうと思うのですが、先ほども言いましたようにはやるところは流行っています。医師からみた柔道整復というのがちょうどこれと同じでしょう。なんで整形外科がこれだけ充実しているのに整骨院なんかに行くねん?という感じなのでしょう。
先ほどあげました大学の教授をはじめとして柔道整復師を嫌いな医師の多くは整形外科医です。理由は勿論いくら整形外科が奇麗事を並べてもお互いに競合関係にあることが多いからです。柔道整復師が医師と競合なんて恐れ多いことのようではありますが、これは私だけが言っているのではありません。たとえば10年ほど前に出版された「整形外科プライマリケア・ハンドブック」という本にこんなことが書いてある。
「整形外科が痛みの治療を手掛けるようになってから、それまで痛みの民間治療として行われていた鍼治療、マッサージ、柔道整復、カイロプラクティックとの競合が避けられなくなった。」
ね、すごいでしょう。ココまで言っちまっていいの?という感じですよね。4つほどの療法があげられていますが鍼もマッサージもカイロも接骨院で行っているところが多いですから実質これは「整形外科と接骨院とが競合している。」と言っているのと同じことです。ただし、柔道整復師が自分たちの領分と勝手に思っている「外傷」ではないですよ。
骨折その他の外傷に対する処置についてはどれだけ柔道整復師が頑張っても絶対に整形外科医にはかないません。たとえばどこかの無人島に流れ着いたというのならレントゲンも撮らず、麻酔も使わずに骨折を整復する技術も重宝されるでしょうけれど実際にはあんまり?そういう機会に遭遇することはないと思います。医師が本音の部分で「競合」と感じているのは「痛みの治療」なんですよ。もちろん技術的なことではなく健康保険を使っていることが競合なのでしょうけれど。この本のこの文章はある意味本質を突き過ぎていたようです。「整形外科プライマリケア・ハンドブック」はその後版を重ねましたがご紹介した文章は2版以降削除されてしまっています。医師にとって柔道整復との競合というのは口にしてはならないことなのでしょうね。
先ほど、柔道整復はケガの手当て、いいかえれば医師の代替機能としての役割を終えつつあるという風に言いましたが世間には代替補完医療という言葉があります。要は正統とされる医療、医学以外をひっくるめてこう呼びます。もうちょっと細かく言うと現行の医療をやめてその代わりに行うのが代替医療。現行の医療にプラスアルファで生活の質を高めるのが補完医療ということになるそうです。
もうしばらく続きます。
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