柔道整復師は使い捨て
以前このブログでも書いたことのある奈良の整骨院の療養費不正請求問題について新聞に載っていました。
この事件は奈良の私立大学の野球部監督が自分の経営する整骨院で実際に施術していない部員の療養費を架空請求したり無資格の従業員に施術をさせて療養費を請求するなどの不正を繰り返していたというものです。その上、勤務していたとされる柔道整復師三人のうち二人は勤務実態のない名義貸しであることも明らかになっています。
奈良県と近畿厚生局は柔道整復師三人に不正に受け取った四千万円余りを返還請求する、との報道もあります。不正請求した分を返金するのは当たり前の話なのですが「主犯」の野球部監督は(この男は柔道整復師ではありません。)この件についてはお構いなし、なのです。
療養費の請求は整骨院の管理柔道整復師の名前で行われているため返還もオーナーの野球部監督ではなく柔道整復師に求められる、と言うことになります。
野球部監督を含め四名が詐欺容疑で刑事告発されるそうですが、もともと何の資格も持たない野球部監督にとっては痛くもかゆくもないでしょう。
一方柔道整復師の方はどうか?療養費の不正請求が判明した時点で五年間の療養費受領委任停止と言う処分が決まりました。今後五年間、彼らは保険の取り扱いができなくなります。ちゃんとした技術を持った柔道整復師なら名義貸しなどと言うことをするわけがありませんからこの時点で実質上は業界からの退場を余儀なくされるのでしょう。
しかも罰金刑以上に処せられた場合、免許取り消しになる可能性もあるのです。
この整骨院は開業当時から不正請求しかしていなかったようですから経営が苦しくなって、つい不正に手を染めた(それも許されることではありませんが)と言うわけではありません。現場は従業員に任せっぱなしのようですから治療師のマネがしたかったわけでもないようです。つまり、この野球部監督、純粋に儲けたいがために整骨院を開設しただけなのです。儲かりさえすれば別にほかの商売でもかまわなかったでしょう。
おそらくはこの監督に知恵をつけた人間がいるのでしょう。「整骨院をやれば儲かりまっせ」と。だからたぶん、この整骨院のような形態の不正は日本のあちらこちらで見られるのかも知れません。
もし、免許を貸しているお利口な柔道整復師がいるのなら、そいつはやめといた方がよさそうです。業界の将来がどうのこうのとか医療人としてのモラルがどうのこうのとか眠いことは言いません。
損です。
この事件で不正に請求された金額は二年余りで四千万ちょっと。普通に整骨院を開業していて稼げない額ではありません。逆に言うなら免許を不正に貸して月にいくらになるのでしょうか。せいぜいが十数万円、と言うところです。それでもし不正がばれたら、三年間の時間と数百万円の学費を費やして取得した柔道整復師免許はおしまいです。
いくらお利口な諸君でもそのくらいの損得勘定ができる程度の脳みそは持っていると思うのですがねえ。
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