THE DAY AFTER最終回
柔道整復師が「補完医療としての痛みの治療」を行うというのは結局のところ「外傷以外の症状を様々な手段で治療する」ということになるでしょう。具体的にどんな手段を使うかと言えば何でもありです。柔道整復師が行うことのできる手段はすべて柔道整復ですから、それこそカイロでも整体でも何でもいいです。ただし、外傷以外ですから健康保険は使うことはできません。こちらの方法論について最後にお話ししますね。
「健康保険にしがみつくのはそろそろやめにして、その後のことも考えてみませんか?」というさっきまでの話と矛盾するようですが、健康保険を使える患者さんには使ってあげた方がいいです。保険を使える患者さんというのは急性、外傷性のケガの患者さんですよね。そういった患者さんの手当て、自分のところで賄えるものについては勿論大いにやるべきだと思います。
これは病院で診てもらった方がいいな、とか通常の経過と違うなと思ったらきちんと理由を患者さんに説明して医療機関に紹介状を書いて送る、要するに交通整理の役割が柔道整復師に求められることは地域にもよりますがまだ多いと思います。「各種保険取り扱い」ができる治療院はやっぱり信用の度合いが違いますよ。
そうして患者さんとの信頼関係ができてくると「病院に行っても治らない症状」の相談が徐々に来るようになるでしょう。そういう症状の患者さんこそが「補完医療としての柔道整復」を求めておられる方ですよね。だって、一般の医療では効果が見られなかったからこそ医師ではない柔道整復師に相談をしてこられているわけですから。
それで、こういう患者さんを増やしていかなければならないのですけれどどうするか。ちょっと昔の話です。私が最初に修業させていただいたのが整形外科なんですけれどなかなかユニークなところで、物療を担当しているのがみんな柔道整復師やはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師でマニピュレーションなんかも普通にやっていました。で、保険治療で改善しない方の中で希望する人には昼休みに特別診療、と言って時間をかけて全身治療みたいなことをやっていました。私の師匠で天才的に手技のうまい先生がおられてもちろん全額実費扱いなんですけれどもこれが満杯、全然予約がとれないくらいの人気でした。
あるいは私事ですが、先にも申しましたように私は現在月に一回広島のクリニックにお邪魔して希望される患者さんにクラニオセイクラルの手技をやっています。今年で11年か12年になります。こちらも保険は使っていません。私の手技はまだ発展途上なんですがにもかかわらず自慢するわけじゃないのだけれどなかなか予約がとれないほどの人気です。ありがたいことです。
それではなぜ医師のもとで手技療法を行うと実費治療なのに人気が出るのか?それは柔道整復師に求められる役割が補完医療の担い手であるから、です。補完医療はそれだけでは存在しえません。必ず一般の医療と対をなすことによってその価値が認められるものでしょう。(変なたとえですがプロレスの悪役をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません)そうであるならば柔道整復師が一般医療との共通項をもつことは「補完医療としての柔道整復」を発展させてゆくための有力な手段になることと思います。
一番わかりやすい共通項が今のところは「健康保険を使えること」ということになります。もっと簡単な言い方をすれば健康保険を使える整骨院の裏メニュー?であるからこそ柔道整復師が行うカイロや整体など様々な治療法が信頼されるのだ、ということになるでしょうか。さらに簡単にいえば「実費治療の患者さんを増やしたいんやったら保険治療との二本立てにしといた方がいいですよ。」という極めて現実的なマニュアルになってしまうのですが。
ケガの治療から始まった柔道整復は、医師の代替という役目を終えて補完医療としての手技療法の専門家へと変化しつつあります。それは柔道整復の滅亡を意味しません。私が大好きなマーケッターのメルマガにこんな言葉が載っていました。「恐竜は滅びたのではありません。鳥に進化したのです。」高い志を持って柔道整復業界に来られた皆様が志を全うされることを願って終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
長い間お付き合いいただいてありがとうございました。「柔道整復師は外傷の処置をする職業」という固定観念のほかに「保険が使えないと食べていけない」という強迫観念から脱出できた人が次の世代として生き残っていけるように思っています。そのための理論づけ、というか考える上でのきっかけになれば望外の幸せです。