THE DAY AFTERその2
昨日の続きです。
それでは何が悪くてそんなになってしまったのか?柔道整復師の数が増えて質が低下した、とはよく言われます。学校がたくさん増えたことを「乱立」という人がいます。柔道整復師の質の低下を嘆いて見せるのも同じ人です。では、かつてはどうだったか?学校がわずかしかなかったころは入学にコネクションが必要なところがほとんどでした。誰か、学校の関係者の紹介がなければ入学できない。入学金のほかに寄付金が必要。それだけではなく紹介してくれた先生の整骨院で朝から晩まで働かなければならない。そうして給料は?みなさん、いくらくらいと思います?整骨院の弟子になってコマネズミみたいに仕事をして一カ月一万円。七千いくらというところもありました。日給ではなく月給ですよ。それは経営者はもうかるでしょう。実質無給の労働力がいっぱい来るんですもん。整骨院の経営者にとっては笑いのとまらない日々だったわけです。学校が増えてそういうおいしいところがだんだん減ってゆけば面白くないでしょう。「学校の乱立で柔道整復師の質が低下した」ということをいう人は多分かつて専門学校の入学のパイプ、もっとはっきり言えば裏口入学のコネクションを持っていて、そういうシステムでおいしい思いをしていた人なのだと思って間違いはないでしょう。
そしたら学校がたくさんできる前の柔道整復師のレベルは高かったか、というとそんなことないです。教えていて思いますけれど今の学生の方が絶対に私たちのころより優秀です。正直の話、基礎科目なんか今の学生が習っているレベルについていけませんもん。臨床系でも内科やら外科やらリハビリテーション医学やら私たちのころにはなかった科目がいっぱいあって私は羨望を禁じ得ないのですがひょっとすれば今、私が専門学校に入っていたら授業についていけてないかもしれません。私が専門学校に通っていた頃ももちろんできる学生もできない学生もいましたし、今もできる学生とそうではない学生がいますけれど平均的なレベルとしては今の学生の方が間違いなく優秀です。当然卒業してからの柔道整復師としてのレベルも少なくとも知識においてはベテランの先生に勝るとも劣らないと思います。
それならば柔道整復師が低迷している原因は何か?というと私は「柔道整復師がケガの手当てにこだわり過ぎているからだ」と思うんですよ。外傷にこだわって何が悪い?と思われます?もちろん柔道整復はケガの手当てに由来する治療体系ということになっていますのでそれはそれで構いません。ただし、柔道整復師はケガの手当てしかできない資格だ、と思っておられるのでしたらそれは正しくありません。ここは重要なところだからよく聞いといてくださいね。
世間では柔道整復師の業務範囲は骨折・脱臼・打撲・捻挫であると思っています。柔道整復師の先生方も学生のみなさんもそう思っておられるかもしれません。なんでか、といえば私たちが使っている「柔道整復理論」の教科書にそう書いてあるからです。世間には柔道整復師が嫌いな人というのはたくさんいて、そういう人たちが柔道整復師を非難するときの根拠にも必ずこの「柔道整復師の業務範囲は骨折・脱臼・打撲・捻挫」というフレーズが出てきます。代表格の一人、某大学整形外科のH教授のホームページにはこんなことが書いてあります。
* 柔道整復師と接骨院とは
今、街角で、いたるところでどんどん新しい接骨院や整骨院、鍼灸整骨院などが開業しているのを知っておられるでしょう。整形外科医の診療所などどこかに隠れてしまうくらいです。さて、もしあなたが肩こりや腰痛やほかの身体の痛みの問題で患者さんで、接骨院や整骨院で施術をうけておられるのなら、あなたが体をゆだねている接骨院の方々は柔道整復師という資格の職種であり、医師ではないことは知っておられますか。柔道整復師は専門学校の3年間の教育で資格を得られる職業であり、高卒3年間で施術所を開業でき、たとえば21才の若さでもお医者さんのようにあなたの体を診察し、施療することができることも知っておられますか。
あなたがもし自分の体の調子が悪くて心配だ、今の症状が悪い病気によるものではないだろうかと本当に心配しておられるのなら、もし今、接骨院の施術で一時的にせよ気持ちよくなっているとしても、すぐに病院に行って診察と診断を受けて下さい。医師には正しい診断と正しい治療を施す責任があります。しかし柔道整復師は法律的にはうちみ、ねんざ、脱臼、骨折などの応急処置を行う職業で、責任を伴う診断はできないのだということを知っておられましたか。
このあと医師でもない者に健康保険を使わせるとは何事か、という話が続くんですけれど最後のところに柔道整復師は「法律的には」「うちみ、ねんざ、脱臼、骨折などの応急処置を行う職業」と書いてあるんですけれど柔道整復師法にはそんなことはどこにも載っていません。ほかの法律にだって多分(というか、絶対に)そんなことは載っていないはずです。同じ間違いはウイキペディアでもやっていて、さらにこの間違った記述をもとに朝日放送の「ムーブ」という番組は柔道整復師批判のキャンペーンを張ったりしました。奈良の事件があったときには毎日新聞の「なるほドリ」というコラムにも同様の記述がありました。多分ウイキペデュアを見ただけで記事を書き番組を作っているわけでマスコミはちゃんと取材しない、というのはほんとのことだなと思いました。
続きます。
PR