発表してきました
22,23日「日本柔道整復接骨医学会」学術大会へ行ってきました。
23日にはかねてから報告の通り、「柔道整復師の業務範囲についての考察」を発表してきました。わざわざ聴きにきてくださった先生方、学生諸士、本当にありがとうございました。発表していて本当に心強かったです。
普段の講義と違い時間が限られていますし、アドリブで話すとワタシの場合暴走の危険性がありますので今回は草稿をまとめていきました。こんな感じです。
柔道整復師の業務範囲に関する考察
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柔道整復師の業務範囲は骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲(急性の外傷)であると一般に言われています。これは柔道整復師がこれらの傷病に対してのみ施術することを法律で許されている、反対にいえばこれら以外の傷病に施術することを禁じられている、という風な解釈であると考えられます。現に、柔道整復師に批判的な大学教授のホームページからウイキペデュア、さらにはマスコミの報道に至るまで、そのような文言を目にする機会も多いかもしれません。
ところが一方で、法律で決まっているはずの「柔道整復師の業務範囲」について柔道整復師法をはじめ関係法規にはいっさい記載されていません。そこで、この「業務範囲」の法的根拠について判例、通達等をもとに考察してみました。
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まず、業務範囲という言葉について。判例や通達でこの語が「柔道整復師の施術の対象」の意味で使用されている例は私の知る限りでは存在しません。では、どのような文脈でこの語が使われているのか見ていきましょう。
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昭和23年の厚生省の通達です。「柔道整復師はレントゲンを使ってはいけない」ということを「業務の範囲を超える」と表現しています。
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こちらは骨折や脱臼の応急手当について昭和23年に出された通達です。これを見てみますと今、骨折や脱臼の応急手当の話をしているわけですから「業務の範囲内で」という文言が柔道整復師の取り扱える傷病の意味でつかわれることは文脈上ありえません。
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そしてこれを受ける形で「まったくその業務の中に含まれない止血剤や強心剤の注射はもちろん許されない」とあります。
要するに業務範囲を超えるとは、柔道整復師に許されない行為を指します。だから「業務範囲」とは骨折とか脱臼とかあるいは新鮮外傷であるとかの具体的な傷病ではなく、「柔道整復師が業として行うことのできる行為」を指す、ということになります。
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それでは「骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲」というのは柔道整復師の業務にとってどういう位置づけができるのか?について考察したいと思います。
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判例や行政の解釈によれば柔道整復師の定義としてこれらの傷病への施術を業とするもの、といわれることが一般的です。これは柔道整復術が柔道の活法、つまりけがの手当てに起源をもつ以上当然のことです。ただし、これら以外の傷病に対して柔道整復師が施術を行うことが法的に禁じられていると考えることは適当ではありません。その根拠が
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ここに揚げました昭和41年の厚生省医事課長通知です。「医行為または医業類似行為であるか否かはその目的又は対象の如何によるものではなく、その方法又は作用の如何によるものと解すべきである」、つまり柔道整復師の業務を逸脱しているか否かはどんな傷病に施術をしたかではなく、患者さんに対してどんな行為をしたかによって判断されるということですね。事実、昭和60年に柔道整復師が風邪の患者に施術を行い医師法違反と業務上過失致死に問われた裁判では、医師法違反については無罪判決が出ています。
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蛇足になるのですがこの「業務範囲」の問題が時として柔道整復師の間でさえ誤解されることがあるのがこれです。ここでいわれているのはあくまでも「療養費の支給対象となる負傷」、ようは健康保険を適用できる傷病が「急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫」である、ということだけです。その他の傷病に対して柔道整復師が施術を行うことについて禁じている判例や通達は存在しません。
このように考えてみると、柔道整復師の業務範囲は「骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲」であるという定義は業務範囲という語の用法を含め法的な根拠に乏しい、ということになります。柔道整復師の業務は外傷の手当てに限られません。現行法の範囲でいわゆる新鮮外傷以外に施術を行うことにも法律的な問題は存在しません。
ご静聴ありがとうございました。