伝聞・推定(虚に吠える人々)
おんなじ話の繰り返しで恐縮なのですが「柔道整復師の業務範囲は骨折・脱臼・打撲・捻挫」であると法律でさだめられているという話は徹頭徹尾根拠がありません。
まず、「業務範囲」という言葉が施術対象をさすことはありません。たとえば「静脈注射が看護師さんの業務に含まれる」ことを指すときに「業務範囲」という言葉を使います。医業の中には医師でないと行うことのできない絶対的医業と、他の医療職(コメディカルといいます)でも行うことのできる相対的医業があります。看護師さんの業務範囲を考察するときはこの絶対的医業にバッティングするかどうかが問題となります。要は看護師さんの業務範囲というのは「法律上看護師さんに許された行為」を指します。
では、柔道整復師の施術の対象が法律で定められているのか、と言えば答えはノーです。柔道整復師法にはそんな規定はありません。
もちろん柔道整復は柔道の際のけがの手当てに起源をもちますので「骨折・脱臼・打撲・捻挫」が施術の対象であることは当然でしょう。ただし、判例を見る限りにおいて柔道整復師の業務は、といえば「骨折・脱臼・打撲・捻挫等」に施術を行うこととなっています。この「等」って何よ?といえばその他の傷病に対しても施術を行いうるということに他なりません。
なぜか?柔道整復師には診断権がないからです。あるケガを「これは捻挫です」ということも「これは捻挫ではない」ということも診断行為に当たりますので医師法に違反してしまいます。
療養費の支給対象は確かに「骨折・脱臼・打撲・捻挫」ですがこの傷病名も法律的には意味がない。だから「急性、外傷性のものに限る」という注釈をわざわざ入れる必要があったわけです。
もし、柔道整復師の施術の対象を「骨折・脱臼・打撲・捻挫」に限るとするならば
1、柔道整復師がこれらの傷病について診断権を与えられる
2、柔道整復師が施術を行う前に医師の診断、同意を必要とする
(現行法でも骨折、脱臼の患部に施術をする際には医師の同意が必要ですが施術の対象をこの四傷病に限るというのでしたら打撲や捻挫にも理論上医師の診断が必要となります)
のどちらかの要件が必要となります。1、は100パーセント実現不可能でしょう。2、の要件を受け入れるならば柔道整復師の開業権は事実上崩壊します。たぶん、臨床整形外科学会はこれを狙っているように思います。
どうです?「柔道整復師の業務範囲は云々」と無邪気に言っていることの危険性がお分かりいただけました?
そうして、柔道整復医を批判する方々の論拠がこの「業務範囲」であることを考えてみてください。医学部の整形外科教授からテレビの報道、ウイキペデュアに至るまでこの根拠のない「業務範囲」に基づいて柔道整復師に対する批判を行っています。この教授も言うとおり「柔道整復師は医師ではない」。それならほかの職種を批判するときにはそれなりの根拠が必要でしょう。柔道整復師法も読んでないような御仁ににうちの業界をあれこれ言ってほしくはないものです。それこそ「キンダイのイガクブはヘンサチが低い。」と私がいうようなものです。(もちろんそんなことを私は思っていませんし一生かけて受験勉強しても合格できないと思いますが)
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